インビオ・オートメーション社は、世界最大規模のオペレーションにオートメーションを設計、導入、維持しています。最新の製造技術を探求し、テストし、カスタマイズすることによって、大きな課題を解決するために顧客と提携することに誇りを持っています。
- 皮下注射針の生産を拡大
- 針を正確に曲げる
- 時間のかかる機械のセットアップをすることなく、材料の硬度のばらつきを克服
- 日産ロットの増加
- 品質向上
- シームレスなロット変更
- フットプリントが小さい
ウェアラブル薬剤払出装置の複雑な製造ニーズ
ウェアラブル薬剤払出装置は、世界中の数え切れないほどの患者の生活を一変させ、毎日の注射の負担から解放し、厳格な投与スケジュールの遵守を支援しています。身体に装着するように設計されたこれらの小型プラットフォームには、継続的なモニタとフィードバックのためのクローズド・ループ・システムやセンサなどのスマートな機能が組み込まれています。当然のことながら、特に皮下注射針の製造に関しては、製造精度が非常に重要です。
ロックウェル・オートメーションのPartnerNetwork™プログラムのゴールドレベルメンバーであり、包括的なオートメーションソリューションを提供するインビオ・オートメーション社のコンセプト&ソリューション担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントであるエリック・ピーターソン氏は次のように説明しています。「ほとんどのカニューレは製造が非常に簡単です。それはプラスチック部品に接着されたまっすぐな針です。しかし、ウェアラブル薬剤機器は、しばしば曲がった針を必要とし、機器ごとに異なる形状の針を必要としています。」
さらに、各針の曲げ角度は正確でなければなりません。単純な注射針のわずかなばらつきは、一般に性能に影響しませんが、ウェアラブル薬剤機器の場合はそうではありません。その針は、回転レバー、ギアホイール、液体リザーバーのような物体と小さな空間を共有しており、適切な流量を達成し、閉塞を避けるために、適切な深さで皮膚の下に挿入されなければなりません。これは、医療機器メーカが対処しなければならない、さらなる複雑さです。
そのため、ある古くからのお客様が、曲がった皮下注射針を大量生産するために購入しようとしていた機器についてピーターソン氏に意見を求めたとき、彼は懸念を表明しました。「その機器は大きくて高価で、曲げるたびに別のステーションが必要でした。彼らは最後の曲げ加工に取り掛かるまで、良い製品ができたかどうかわからないだろう。」
製造の各段階で品質を監視する能力がないため、製造工程に重大なリスクをもたらしていました。ピーターソン氏は、ユニット当たりの生産コストを削減し、一貫した品質とパフォーマンスを提供するという目標を達成するため、お客様がより実行可能なソリューションを特定する手助けをすることにしました。彼は、いつもと違う場所でインスピレーションを得ました。
課題
皮下注射針の曲げ加工と組立のスケールアップ
インビオ社にアプローチしたお客様は、糖尿病患者向けのウェアラブルインスリン管理システムを開発・製造する、受賞歴のある医療機器メーカです。同社の主力製品は身体に装着し、装着者の個人設定に基づいて持続的にインスリンを投与します。
ウェアラブルデバイス内の針は、少なくとも14回の屈曲を伴う複雑な形状をしています。また、最初と最後の曲げ部分には±0.005インチの精度が要求され、針ストックの総公差は±0.015インチです。これらの針の製造は非常に困難です。
ピーターソン氏は次のように述べています。「技術者たちは、ハードツーリングで曲げの調整ばかりしていました。針のロットを変えるたびに、さまざまな装置を行き来し、曲げモジュールの調整に多くの時間を費やしていました。材料の跳ね返りが1度違うだけで、すべてのベンディングステーションを再調整する必要がありました。」
このメーカが生産規模を拡大することを決めたとき、ピンチが訪れました。インビオ・オートメーション社のオートメーション技術・規格担当バイスプレジデントであるジョナサン・プール氏は次のように説明しています。「手作業や半自動の針曲げ技術は、1つまたは複数の曲げを繰り返し正確に効率よく成形できないため、大量生産レベルまでスケールアップできません。」
戦略的目標を達成するために、このお客様は、材料の硬さに関係なく、皮下注射針をさまざまな形状に自動的に修正できる柔軟な曲げ加工・組立機を必要としていました。まったく新しいソリューションが必要でした。
ソリューション
複数の曲げ加工を行なう、柔軟でプログラム可能な機械
プログラム可能なシステムを使って曲げ加工を自動化するというアイデアは、意外なところからピーターソン氏に浮かびました。「家で『How It's Made』を見ていたんです。曲げ加工機を使って工業用ワイヤからバスケットを作っている会社を見たんです。ひらめいた瞬間でした。手短に言うと、そのアイデアとプロトタイプをお客様に見せたところ、驚いてその場で注文してくれました。」
このプロトタイプは、最終的にインビオ社の特許を取得した針曲げ組立機となり、市場でもユニークなソリューションとなりました。この装置はプログラム可能で、皮下注射針にさまざまな方向や角度で1つまたは複数の曲げを形成することができます。この柔軟性は極めて重要な利点であり、オペレータは、診断インターフェイスを介して、工具をほとんど、あるいはまったく変更することなく、ユーザが選択可能なさまざまな屈曲部を形成することができます。この柔軟性により、製造工程の効率と適応性が大幅に向上します。
ピーターソン氏は次のように述べています。「私たちのお客様は、この機械の柔軟性とプログラム可能性に興奮していました。針のロットによって硬度特性が異なるため、私たちの機械は検査カメラを使って重要な寸法を測定します。そして、ビジョンフィードバックを使用して、曲げモジュールの曲げパラメータを自動的に調整します。これにより、針の形状は寸法目標の中心に保たれます。しかも、場所を取らない。セルはわずか3x6フィートです。」クリーンルームを使用しているお客様なら誰でも証言できるように、設置面積が小さい設備はコスト面で大きなメリットがあります。
安定した針品質を実現する自動キャリブレーション
ウェアラブルデバイスが機能するためには、針の両端の曲げ加工が高精度でなければならないため、このマシンのビジョンガイド工程と精密部品ハンドリングは革新的です。曲げモジュールに取付けられたカメラが各針の両端を検出し、サーボ駆動のスライドが曲げが必要な位置に正確に針を配置します。
要求される公差が±0.005インチであるのに対し、この機械は±0.002インチの公差で曲げ加工を行なうことができ、すべての針で大きな針材の公差を完全に補正します。このレベルの精度は、一貫した品質と性能を提供し、オペレータの時間と労力を節約し、品質管理に安心感を与えます。
「オペレータは、新しいロットの原料を投入するたびに、機械が自己キャリブレーションしていることに気づいていません。プロセスは目に見えません。今では9秒ごとに針を製造できます。彼らはそれをガラガラと動かしているのです。そして、生産規模を拡大したいときには、モジュールを追加するだけでいいのです」と、ピーターソン氏は続けました。
この機械の制御は、ロックウェル・オートメーションのCompactLogix®プログラマブルコントローラで構築されています。この機械には、Kinetix®サーボドライブ&モータおよびPowerFlex® 525 ACドライブが搭載されています。
スイッチモード電源装置、ヒューズホルダ、ディスコネクトおよびコンタクタ、Stratix®スイッチは、スムーズな電力フローを実現し、光電センサは機械内を移動する製品の動きを検出するために使用されます。オペレータは、PanelView™グラフィックターミナルとAllen Bradley®の押しボタンおよび信号伝達装置を使用して機械とやりとりします。
「パートナシップにすでに投資していたおかげで、ロックウェル・オートメーションから必要なものはすべて得られると、当初からわかっていました」と、プール氏は語りました。
結果
生産効率とクリーンルームのスペース利用を改善
インビオ社がお客様のクリーンルームに曲げ機と関連する組立機を設置すると、オペレータにはマニュアルと実地トレーニングが行なわれました。数時間で、オペレータは機械を使えるようになりました。ピーターソン氏は次のように述べています。「これはメーカにとって大きなメリットです。機械がすべて自分で調整するので、熟練した技術者は必要ありません。必要なのはオペレータだけです。」
設置以来、この医療機器メーカは目覚ましい成果を上げています。ボックス、ベルト、ダイ、潤滑装置、トレイなど、大量のサポート機器を備えた高価な機械を購入する必要がなくなりました。そのかわりに、コンパクトなモジュール式のコンベアシステムを導入したことで、クリーンルームの占有スペースが約3分の1になり、メンテナンスの手間も大幅に軽減されました。
また、ウェアラブルデバイスが要求する±0.005インチの精度でロットのばらつきに対応し、生産を拡大するために必要な柔軟性も備えています。生産チームは、増え続ける販売目標や変化するビジネス目標に対応できるようになりました。
医療機器メーカの的確な意思決定を支援
ビジョンガイド加工、精密部品ハンドリング、制御エンジニアリングにおけるインビオ社の専門知識と、ロックウェル・オートメーションとのパートナシップにより、生産規模の拡大、運用コストの削減、ビジネスのレジリエンシ(回復力)の向上を目指すドラッグ・デリバリ・システム(DDS: 薬物送達システム)のメーカに最適な、ユニークな機械の設計が可能になりました。
ピーターソン氏は次のように述べています。「私たちは、お客様の課題をよりよく理解し、的確な決断を下すお手伝いをすることに喜びを感じています。オートメーションにおいて豊富な経験を持っているため、私たちは何かを行なうためのより良い方法があると思われる場合、代替ソリューションを提供することを恐れていません。」
インビオ・オートメーション社についてご覧ください。
公開 2024/09/12