お客様へのご提案
最近の市場調査から、低圧ACドライブの世界市場はソフトドライブの世界市場のおよそ20倍もの規模を維持していることが判明しています。ACドライブではなくソフトスタータを一部のアプリケーションに使用する場合に伴う多額の費用やサイズ、エネルギー削減を考慮すると、これは大変興味深い現象だと言えます。
ソフトスタータで十分に対応できる状況でドライブが利用されるのはなぜでしょうか。
答えは実にシンプルで、ACドライブがほぼすべてのアプリケーションに対応する一方で、ソフトスタータはそうではないためです。これを、ソフトスタータよりもACドライブの方が特定や設置、立上げが簡単だと解釈する人もいますが、それは間違いで、ACドライブを利用する際にはソフトスタータよりも考慮すべき点がたくさんあります。別の見方をすれば、ACドライブはソフトスタータよりも多種多様なアプリケーションに対応しているということです。
古い諺にもあるように、不動産を購入する際には何よりも“ロケーション”が重要です。同様に、特定のアプリケーションにソフトスタータとACドライブのどちらを選ぶかを決定する際に重要となるのが、“アプリケーションの特性”です。
ソフトスタータとACドライブのどちらを使用するか決定する際には、次のようなよくある質問を検討してみてください。
- 負荷トルク要件は何か。
- ランモードの間、速度制御は必要か。フルスピードでの反転動作は必要か。
- 配電に関する考慮点や制限はあるか。
ソフトスタータかACドライブのどちらにするか選ぶ場合、アプリケーションの負荷トルク要件は極めて重要です。つまり、アプリケーションに高い始動トルクは必要か、ゼロ速度でフルトルクになるか、保持トルクはあるか、という点です。定義上、ソフトスタータは減電圧スタータであり、これは、ゼロ速度や超低速ではフルトルクは利用できないことを意味します。
このため、通常、押出機、容積式ポンプ、傾斜コンベア(オーバーホーリング負荷)、リフト、エレベータ(油圧の場合を除く)などの負荷タイプには、ソフトスタータの使用はお奨めできません。一方、ACドライブは0から定格回転数までの定格トルクの生成が可能で、通常、あらゆる種類の負荷に対応します。
アプリケーションに関して検討すべきもうひとつのポイントは速度制御能力で、これはソフトスタータおよびACドライブの物理的構造によって決まります。ソフトスタータには、AC入力ラインをモータに接続するシリコン制御整流子(SCR)が装備されており、その物理的特性によりSCRのスイッチがオンになっている場合はAC入力波形の点が変化しますが、SCRが自動的にオフになった場合は変化しません。これによって、0からフルライン電圧までのモータ電圧のランプ(電圧制御)が可能となり、これは、ライン周波数がモータに常に適用され、適切な速度になるとモータが60Hz(または50Hz) rpm相当で実行することを意味します。フルスピードの方向は、ライン電力接続の順序により決まります。
一方、ACドライブには、一般にダイオード・フロント・エンド、DCバス、絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)から構成される能動電子コンポーネントがより多く含まれます。IGBTはどの時点であっても、好きなだけ長く何度でもスイッチを“オン”または“オフ”にできます。異なる電圧と周波数(電圧および周波数制御)をモータに適用できるため、どちらの方向でも速度を継続的に制御できます。
ACドライブは、モータ負荷に厳密に適合するものを含め、ほとんどの実用的な電源システムで機能します。通常、ソフトスタータを使用するときは、供給源にはモータ負荷の全負荷電流が150~450%になるような始動電流の容量が必要となります。ACドライブの中には単相入力電力で3相モータ負荷を作動できるものもありますが、ソフトスタータは3相の入力電力でしか動作しません。
特定の設置にソフトスタータとACドライブのどちらを選ぶか決定する際は、アプリケーション特性をまず第一に考慮すべきです。トルク要件や速度制御、配電に関する懸念を慎重に検討する必要があります。
ソフトスタータのアプリケーションでは、次のような一般的な経験則を検討します。
- 機械の磨耗やシステムへの損傷を低減する
- 電流制限が始動方式の主な理由
- 低い始動トルクのアプリケーション
- 軽くまたは適度に負荷がかかったアプリケーション
- 全速運転
ACドライブのアプリケーションでは、次のような一般的なガイドラインを検討します。
- ランモード中の速度制御
- 高い始動トルク
- 位置制御
- ゼロ速度での保持ロータ
どちらのモータ制御方式においても設置および立上げ、追加フィルタや回路保護に関する考慮事項をさらに検討し、ソフトスタータまたはACドライブを選択してください。
公開 2015/07/06