BIQハウスは立方体の5階建てパッシブビルで、内部には15世帯のアパートが入っています。ビルの設計はオーストリア、グラーツの建築事務所であるスプリッタヴェルク社が手がけており、同社のコンセプトはIBAの建築設計コンペティションを獲得しています。このファサードシステムを共同開発したストラテジック・サイエンス・コンサルタント株式会社(SSC)、アラップ・ドイツ株式会社、コルト・インターナショナル株式会社の各社が導入したのが、ロックウェル・オートメーションのオートメーション製品およびサービスで、戦略的提携パートナであるエンドレス・ハウザー社の計測およびプロセス技術がシームレスに統合されています。
課題
エネルギーシステムの中核となるバイオリアクタファサードの総面積は200平方メートルにおよび、個々のサイズが2.6m×0.7m、厚さ約2cm、容量およそ24リットルのガラスタンクから構成されます。タンクには栄養塩類を強化した培養液が充満しており、微細藻類の栽培に最適な環境となっています。藻が常に動き、二酸化炭素を継続的にリアクタに送り込んで光合成を促進するために圧縮空気が導入されており、二酸化炭素はガスボイラーから供給されます。藻が使用しない日光はリアクタの液体を温める働きもあり、太陽エネルギーシステムと同じく、この熱はエネルギー利用装置に分離され、ビルの暖房に使用されます。
SSC社の管理ディレクタであるマーティン・ケルナー氏は次のように述べています。「この先駆的なプロジェクトでは、藻類の培養技術を最新の建築技術と連携させることが大きな課題となりました。暖房やバイオマス生産といった微細藻類のファサードが有するさまざまな機能を確保しながら、ビルの防音や日光の遮蔽を行なうにはこれは不可欠でした。世界初のBIQハウスによって遂にこれを達成できたんです。」
ソリューション
オートメーション技術はシステム全体の重要な部分で、これによって年間を通してシステムを稼働することができます。ロックウェル・オートメーションのAllen-BradleyのCompactLogix™コントローラは、プログラミングソフトウェアとコントローラ、I/Oモジュールのシームレスな統合を実現するオートメーションシステムの中核となるもので、これにより初期開発にかかる時間を短縮し、立上げや運用のコストを削減することができます。
CompactLogixコントローラに接続されるその他のデバイスには、熱交換器や藻類の刈取り機、バイオマスをバイオガスに変換する変換ユニットといった建築技術システムが含まれます。またPLCは、リアクタモジュールを太陽の方向に誘導するのに使用するポンプも制御します。リモートI/OはEtherNet/IPを介してコントローラに接続されており、ビルのフロア全体に分散型制御を提供するとともに、堅牢かつリアルタイムなネットワーク接続と高速ディスクリート制御を実現します。産業用アプリケーションの需要に対応するためネットワーク設計を次々と変更する他のネットワークとは異なり、EtherNet/IPではシステム全体の使いやすさと一貫性を確保することができ、リアルタイムの機能が高まります。
全体のシステムは、SSCストラテジック・サイエンス・コンサルタント株式会社の専門家がRockwell SoftwareのFactoryTalk® View視覚化ソフトウェアを利用して操作します。使いやすいグラフィカルな機能で全プロセスを正確に認識できるため、システムのモニタやプロセスの分析を簡単に実行でき、またエラーのアラートやアラームにも迅速に対応できます。視覚化ソフトウェアから定義済みの制御パラメータを変更できるため、必要に応じてプロセスに直接介入することも可能です。FactoryTalk Viewはエラーなくバイオリアクタを稼働させるうえで欠かせない重要な要素です。