マルセロ・タルキエルタウブはロックウェル・オートメーションの東南アジア地域担当のディレクターであり、ライフサイエンス業界向けの同社のスマートソリューション、スマート工場の導入における課題、同部門におけるデジタル技術の採用を推進する要因について語ります。
ライフサイエンス分野、特にアジア太平洋地域におけるスマートマニュファクチャリングの推進におけるロックウェル・オートメーションの役割について詳しく教えてください。
ロックウェル・オートメーションはデジタルトランスフォーメーションのグローバルリーダであり、スマートニュファクチャリングの推進において極めて重要な役割を果たしています。ライフサイエンス分野では、スマートマニュファクチャリングは効率性の向上、コンプライアンスの徹底、製品品質の向上に不可欠であり、イノベーションとオペレーショナルエクセレンスを推進するというロックウェル・オートメーションのミッションに合致しています。
アジア太平洋(APAC)地域はライフサイエンス分野の急成長市場であり、革新的なヘルスケアソリューションに対する需要の高まりと厳しい規制要件が特長です。この地域の医薬品市場は、2022年の700億ドル近くから2032年には1,530億ドル近くまで成長すると予想されており、シンガポールはAPACにおける主要な生物医学・医薬品ハブの1つとなっています。
複雑な製造プロセスのニーズを満たしながら、規制を遵守するために、企業は高度な製造オートメーション技術に目を向けています。オートメーションは、革新的なヘルスケアソリューションに不可欠な精度、効率性、拡張性を高めます。また、グローバルな規制基準への準拠を保証し、ヒューマンエラーを最小限に抑え、一貫した製品品質を維持します。さらに、オートメーションは、急速に成長するAPAC医薬品市場で競争力を維持するために不可欠な、市場投入までの時間の短縮とコスト効率の高い生産をサポートします。
ロックウェル・オートメーションは、ライフサイエンス業界を強化する高度なテクノロジとソリューションのスイートを提供しています。これには、IoT対応デバイス、高度な分析、およびFactoryTalk PharmaSuiteなどの包括的なオートメーションプラットフォームが含まれます。ライフサイエンス業界向けに特別に開発されたこのMESソリューションは、IoTとオープン・コンテンツ・アーキテクチャをインテリジェントなアップグレードエンジンと組み合わせて活用し、バッチ処理とディスクリート処理の両方で成長するための堅牢なシステムを提供します。このソリューションを導入することで、データ収集が自動化され、例外処理をリアルタイムで確認できるようになります。
製薬業界は他の業界に比べてデジタル技術の導入が遅れていると言われています。これについてどうお考えですか? 製薬業界におけるデジタルトランスフォーメーションの可能性をどのように見ていますか? 今後、この分野でスマートマニュファクチャリングが増えるのでしょうか?
医薬品の製造工程は複雑で、製品の品質や患者の安全性にも関わるため、製造メーカは新技術の導入に慎重になっていました。しかし、効率性の向上、データ分析の強化、コンプライアンス追跡の改善など、企業がデジタルトランスフォーメーションのメリットを認識するにつれて、この状況は変わりつつある。AI、IoT、ブロックチェーンなどの新興テクノロジは現在、業務の合理化と強固な品質管理のためにますます統合されつつあります。
第9回「スマートマニュファクチャリング報告書」では、ライフサイエンスを含むあらゆる分野の企業を網羅する回答者の約95%がスマートマニュファクチャリング技術を使用または評価しており、これは2023年の84%から急増しています。医薬品製造業界では品質とコンプライアンスが最優先事項であることを考えると、スマーマニュファクチャリングの適応は医薬品業界全体にとって大きな可能性を秘めていると言ってよい。
業界では、特殊な医薬品を開発するためにより複雑な製造工程のニーズに対応する必要があるため、今後スマートマニュファクチャリングの採用が進むことでしょう。より多くの技術的進歩の採用は、業界内の組織や製造メーカが生産コスト全体を調整・管理するのに役立っています。
ロックウェル・オートメーションが、特にAPACのライフサイエンスメーカの進化するニーズに対応する上で、予測される主な課題と機会にはどのようなものがありますか。また、それらに対処するための戦略の優先順位はどのように決められますか?
複雑な製造工程や新技術が開発される中、医薬品製造業界は現在、進化する製造メーカのニーズにおけるいくつかの課題に直面しています。その1つが、ASEAN医薬品規制ポリシーのような規制機関が定めるグローバルレベルの品質管理と基準を遵守することの重要性です。その他の課題としては、製薬業界におけるサプライチェーンの混乱、バイオ製薬工学や技術的な経験といった専門分野を兼ね備えた適切な人材の確保、製品の品質を確保しながらコスト効率を維持することなどが挙げられます。
これらの課題に対処するために、業界内ではいくつかの戦略を優先させることができます。リアルタイムモニタと予測分析を採用することで、プロセスやプラントのデジタルツインズを導入し、データをリアルタイムで観察・活用できるようにすることで、品質が常に達成されるようにすることができます。スマートマニュファクチャリングのソリューションにIoTを活用することで、サプライチェーンの可視化が可能になり、将来的にサプライチェーンが混乱した場合のレジリエンス(回復力)と対応力が強化されます。自動化されたソリューションを採用することで、手作業を減らし、生産コストを削減し、長期的には効率を向上させることができます。
製薬業界ではデータプライバシーが非常に重要です。ロックウェル・オートメーションは、特に製薬業界におけるデジタルトランスフォーメーションの取り組みにおいて、機密情報を保護するための強固なデータプライバシー対策をどのように実施しているのでしょうか。
ロックウェル・オートメーションは、包括的なセキュリティフレームワークと高度な暗号化テクノロジを導入することで、堅牢なデータプライバシーの提供を支援します。当社のソリューションには、不正アクセスやデータ漏洩を防止するための安全なデータ保管、アクセス制御、継続的な監視が含まれます。製薬業界は、他の業界と同様にサイバー攻撃に対して脆弱です。当社は、NIST (National Institute of Standards and Technology: 米国国立標準技術研究所)サイバーセキュリティフレームワークを使用して、効果的な防御の5つのカテゴリ(特定(Identify)、保護(Protect)、検知(Detect)、対応(Respond)、復旧(Recover))に取り組んでいます。
今後、ロックウェル・オートメーションは、ライフサイエンス分野の顧客向けにスマートマニュファクチャリング機能を向上させるために、どのような優先事項や戦略的取り組みを進めていきますか?
ロックウェル・オートメーションは、ライフサイエンス業界をはじめとするさまざまな分野の企業が、デジタル技術を駆使してビジネスを変革していく過程を支援することを重要な優先事項の1つとしています。最近、ロックウェル・オートメーションはNVIDIA (エヌビディア)との協業を拡大し、自律移動ロボット(AMR)におけるAIの活用を推進し、性能と効率を向上させました。これは、次世代産業アーキテクチャの加速におけるロックウェル・オートメーションとNVIDIAの協力関係を継続するものです。これは医薬品製造業界にとって素晴らしいニュースであり、業界内でのスマートマニュファクチャリングのソリューションの採用を加速させることになるでしょう。
テクノロジが進化し続ける中、ロックウェル・オートメーションは、最新の進歩をソリューションに統合することに尽力しています。ロックウェル・オートメーションは、デジタルツインズの採用拡大、予知保全の利用拡大、AIとIoTデバイスの統合の深化により、精密医療のイノベーションを推進し、ライフサイエンス分野におけるシームレスでセキュアかつ効率的な製造プロセスを確保することを目指しています。
公開 2024/07/09