将来の人材を育成

将来の人材を育成

人材の変革には、新規の労働者と経験豊富な労働者の安全ニーズを満たすための機械設計、トレーニング、および採用戦略を含む多面的なアプローチが必要となります。

スティーブ・ラディク、ロックウェル・オートメーションの安全プログラムマネージャ

製造や産業における人材は劇的に変化しています。高齢の労働者の退職とともに、彼らが数十年にわたって蓄積した経験や知識が失われる一方で、限られた能力しか持っていない若くて経験の浅い労働者がそれにとってかわろうとしています。

これは特定の地域に限られた問題ではなく、世界中で発生している現象です。

米国では、製造に携わる高度なスキルを持った労働者の平均年齢は56歳です。欧州委員会の調査によると、ヨーロッパでは雇用者の3分の1が技能の不足や技能を持った志願者の不足により採用が困難であると感じています。また、マッキンゼー・アンド・カンパニー社の概算によれば、中国では、2020年には高度なスキルを持った労働者の需要が、雇用可能な労働者数を2,400万人上回るとされています。

この労働力の変化の問題は、世界的な生産性に大きな影響を及ぼしています。さらに、この問題が、労働者の安全にも深刻な結果を招く恐れもあります。

高齢の労働者の場合、身体の衰えが作業に影響し、ケガのリスクが高くなります。例えば、高齢の労働者では危険を認識して反応するまでの時間が長くなり、重いものを持ち上げて運ぶ力も衰えるため、ケガをする可能性が高まります。

とは言え、若くて経験の浅い労働者はケガの頻度がより多く、重傷率も高い傾向があります。オーストラリア労働安全審議会によると、製造業に従事する25歳以下の労働者1,000人に対して121件の負傷事故が発生しています。これは、これより年齢が高い労働者の負傷事故発生率の約2倍です。

対応策の準備

何か1つの対策や応急処置で、労働力の可用性に関する長期的かつ多様な課題を解決することはできません。しかし、事業に対して入念な準備を行ない、従業員を訓練するための重要な手順を実施することはできます。

1. 機械設計を改善する。人材の変化に対応して、機械設計を改善させる必要があります。高齢の労働者のために、物理的に軽度な機械操作を考慮する必要があります。持ち上げ、折り曲げ、および反復作業の削減などです。若くて経験の浅い労働者には、危険な位置に手を置くなどの不適切な行動のリスクを削減する、積極的な安全システムが必要になります。

これには、機械の設計と構築について深く再考する必要があります。

危険事象の評価では、すでに危険事象(ハザード)として認識されているものだけでなく、幅広い年齢層の労働者に対する人間工学的な障害や、使いやすさの問題も考慮する必要があります。評価、機能的な仕様作成、機械設計を行なうエンジニアは、オペレータやメンテナンス技術者がとりうるすべての動作を評価しなければなりません。

機械制御システムと統合された現在の安全システムでは、リスクを緩和しつつ、効果的かつ生産的な機械の運用が可能です。これらのシステムでは人間工学がより考慮されているため、労働者がシステムをオーバライドして自分自身をリスクにさらす可能性が減り、ハード配線されたシステムのような厄介なシャットダウンの発生率が低減します。

2. コネクテッドエンタープライズを構築する。コネクテッドエンタープライズは、スマート、セキュア、かつ接続されたオペレーションで構成されます。世界中のオペレーションおよびリモートオペレーションで人、プロセス、およびテクノロジに跨りシームレスに情報共有を行なうことで、共同作業が円滑になり、問題解決が迅速化し、革新と生産性の向上につながるのです。

安全の観点からみると、コネクテッドエンタープライズによってリスクを特定することが可能になり、安全関連のシャットダウンや事象がどこで発生したか、さらにはより詳細な評価やリスク緩和によって安全性が向上する可能性があるかが分かるようになります。情報の収集と分析により、ケガ、ニアミス、および安全シャットダウンが発生した場所、アプリケーションおよび操作が明らかになり、労働者の安全と生産性の両方に対して良い効果が生まれます。

3. トレーニングを活用する。年齢の高い経験豊富な従業員の貴重な「ノウハウ」は維持され、若くて経験の浅い従業員に継承される必要があります。若い従業員は、予期しないダウンタイムやMTTR (平均修理時間)を削減するために、装置のメンテナンスや問題のトラブルシューティングに必要な技能や知識を習得する必要もあります。

トレーニングプログラムを再検討し、以下の3つの重要な要素を取り込んで、従業員の知識の維持や構築に役立てましょう。

• 将来の世代交代時に一貫性が保てるよう、標準となる処理や手順を文書化するための正式なプログラムを確立する。

• 従業員が必要なレベルで業務が行なえる知識や能力があるかを確認するために、ジョブスキルや知識レベルの分析を行なう。

• サステナブルかつ柔軟なコンピテンシ改善プログラムを組織に組み込んで、生産性と収益性を継続的に向上させる。

4. 外部サービスを利用する。特殊スキルがまれにしか必要でない場合、業界の専門家が提供するコンサルティングや技術サービスを利用すると良いでしょう。また、現在の人材を拡大したくても、リソースが限られている場合や社内に人材が見つからない場合も、外部のサービスが役に立ちます。

例えば、機械の安全評価には、適用可能な安全規格、機械的な危険事象、および抑制技術に関する深い見識が必要です。これらのスキルは簡単に開発できるものではなく、日常的に必要なものでもありません。第三者に安全評価を依頼することで、規格への準拠の確認、リスク削減、および生産性向上が可能になります。

5. 社会と調和する。会社の人手が十分に足りていて生産的であれば、従業員が安全をないがしろにする手順の無視を行なうことは少なくなります。残念ながら、もはや労働者の教育を学校に期待する時代ではありません。私たち自身が将来の労働者を作り出す必要があるのです。

企業は若い労働者に対して、製造業の新しい側面を紹介し、魅力的で「稼げる」仕事がたくさん用意されていることを伝えなければなりません。また、多くのキャリアアップの機会が待っていることを若者に知らせ、教育過程の早い段階でこれらのスキルを習得したいという情熱を育てる必要もあります。

企業は、将来の従業員像を変え、マイノリティや女性を含むこれまで対象とされていなかったグループを採用する必要もあります。これは、単なる人種や性の平等の問題ではありません。製造メーカや事業者には、新しいソリューションを世界や競合ひしめく環境に送り出すための優秀な人材が必要なのです。

課題の克服

世界の労働力が年齢、ニーズ、期待に関して急速に変化しているということは、逃れようのない事実です。製造メーカや事業者にとって残された道は、この問題の影響を受ける前に対策を立てることです。

これは、従業員だけではなく経営者の未来をも持続的なものにできる安全な作業環境、快適な作業条件、柔軟性、トレーニング、および知識を考慮して、インフラを再構築することを意味します。

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