1987年に、アデレード・コンベンション・センター(ACC)はオーストラリア初の専用コンベンションセンターとして竣工され、会議施設やサービスについての基準となってきました。
主会場のプレナリーホールは、ヒンジで連結された座席、可動式の壁、回転式の座席ドラムというユニークな組合せにより、あらゆるイベントに合わせて15以上の構成で座席を配置できます。ヒンジで連結された座席は、業界トップクラスのテクノロジを採用した世界最大の6台の座席ドラムホイストで移動します。このシステムの設計、開発、設置は、 HME Services社が担当しました。
画期的かつ柔軟な座席システムの設計
HME Services社は、必要に応じてオープンスペースとしたり、階段状に座席を配置したりという、多目的用途会場の安全要件を考慮するためのリスクアセスメントを実施しました。
HME Services社の制御システム担当者であるジョン・ゲディーズ氏は次のように述べています。「座席システムの設計は、不要時には座席を持ち上げ、天井構造に収納してロックするというコンセプトに基づいて行なわれました。座席ベイは機械的にヒンジで取付けられており、簡単に脱着が可能な持ち上げピンでホイストに連結されています。この持ち上げピンを座席ベイから取り外せば、座席を持ち上げることができます。」
「リスクアセスメントによって、ロックウェル・オートメーションの統合安全が考慮されたAllen-BradleyのCompact GuardLogixシリーズのPLCをベースとしたハードウェアが、安全な環境の実現に必要であることを確認できました」と、ゲディーズ氏は説明します。
1台のCompact GuardLogixコントローラに、統合安全とイーサネットを介したモーションが組み込まれています。また、Studio 5000を使用してコントローラをプログラムし、エンジニアリングと設計要素を1つの標準化されたフレームワークに統合することで、生産性の最適化とエンジニアリング時間の短縮が実現しました。システムの安全やモーションのプログラムにも、同一のソフトウェアが使用されました。ホイストの動力にはPowerFlex 755ドライブを使用し、イーサネットを介して安全を管理しています。
「制御システムは、メイン制御キャビネットと各ホイストのホイスト制御キャビネットで構成されています。POINT I/OモジュールとStratixスイッチを活用することで、統合制御と安全のためのフィールド配線を1本のイーサネットケーブルに集約できました」と、ゲディーズ氏は述べています。
シンプルな制御と安全
座席のセグメントは後部の壁の曲線に合わせて設計されているため、上下動する際に互いに重なってしまいます。この問題を解決するために、自動的にセグメントをずらしたり、ホイストの動作をモニタしたりすることで、機械的な衝突を回避できるよう制御システムをプログラムしました。オペレータが安全イネーブル押しボタンを押した状態で、プログラムされた押しボタンを作動している間は、この衝突回避動作が機能します。
このシステムで使用するFactoryTalkソフトウェアは、メイン制御キャビネットとタッチスクリーンペンダントのPanelView Plus画面に表示されます。メイン制御キャビネットの10インチPanelView Plusタッチスクリーンから、さまざまな診断や立上げ制御にアクセスできます。
制御システムは座席システムの6台すべてのホイストを管理します。マルチ・リーブ・プーリ・システムと合わせると、持上げ総重量は240トンにもなります。各ホイストには、2つの鋼鉄ワイヤ・ロープ・ドラムと、2つのゼロフリート鋼鉄ワイヤロープ追従プーリが取付けられています。ロープが掛けられている、または取り外されている間、これらの追従プーリはドラムとともに上下動します。各ドラムと追従プーリには、位置フィードバック装置が取付けられており、PLCでモニタされています。少しでも誤差が生じると、ホイストとシステムが自動的に停止し、安全にかかわる事故を回避します。
「この座席システムにとって安全は最優先課題でしたが、厳重にインターロックされたフィードバック装置を統合することで、高水準の安全性を達成できました」と、ゲディーズ氏は言います。