同じ原材料から作られるビールは、一見同じに見えるかも知れませんが、醸造技術の細かな違いのため味も喉ごしも劇的に異なります。これが、ビール独自の魅力です。
卓越した醸造の中核要素、つまりビール愛好家がよく理解し、愛するモルト、ホップ、水およびイーストの異なる組み合わせは、何世代にもわたって変わっていません。しかし、最終製品の品質と均一性、または再現性を確保するための醸造工程の監視と管理の手段は変わりました。
クラフトビール醸造所のニーズ
醸造所の規模および使用する方法にかかわらず、醸造所には独自のビールを作るためのいくつかの優先事項があります。それは、特に生産量の最大化、品質維持、清浄性の向上、およびむだの最小化です。
これらすべての優先事項についてのリアルタイムのデータにアクセスできることが、醸造工程のより優れた管理および監視の核心となります。現代の醸造システムの高まるニーズに対応するため、ロックウェル・オートメーションはプロセスおよびバッチアプリケーション向けのFactoryTalk® Craft Brewソリューション(PDF)を開発し、クラフトビール醸造所、システムインテグレータおよび醸造所向け機械装置メーカ(OEM)に、標準化された単一の制御システムを提供します。
PlantPAx®分散制御システム(DCS)のコアライブラリを基本として構築されたカスタムライブラリと、最新のアーキテクチャを提供する拡張性に富んだコントローラによって、醸造所はバッチシーケンスを改善し、プロセス稼働時間と効率を最適化し、レシピの調整を簡易化することができます。最も重要なのは、バッチ品質を監視し追跡するためのオペレーションの洞察が得られることです。
醸造所の精度の高い制御
醸造所では、スケーラブルな制御システムからのデータは、より効率的な在庫、ブレンドおよび原料表をサポートします。
仕込みの粉砕プロセスで、レシピの量、ローラのギャップ、自動開始および終了、およびふるい分析がより簡単になります。粉砕混合および麦汁の濾過工程、発酵およびイースト管理の透明性は、より高くなります。
例えば、オペレータは、タンクに事前設定されたシステムとオペレータ操作のレベルに合わせた異なるモードを使い、収集されたバッチ生産関連の情報および重大な品質ポイントで関連付けられた情報をFactoryTalk View Machine Edition (ME)またはSite Edition (SE)ヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)から取得できます。
さらに、システムの発酵温度制御およびレシピ管理は、オペレータに自動、半自動または手動モードでの実行のオプションを提供し、カスタム可能なメッセージとレシピ名を使ってシステムをカスタマイズすることができます。これにより、各プロセスの手動調整が軽減され、生産性が最適化されるだけでなく、最終製品の全体的な品質の改善と品質の均一性を向上させるためのより優れた意思決定につながります。
テクノロジとクラフトビール
最新技術の恩恵の1つは、発酵をモバイル機器で監視できるようになったことです。どこにいても、HMIから醸造履歴およびイベント、バッチ報告書および高度な診断データにアクセスすることができます。また、このシステムはコードまたはプロセス値の不正な修正に対する包括的な保護を提供し、投資を守ります。
総合的にみて、オートメーションのみが提供できるデータは、品質の確立と維持および醸造したビールの品質の均一性において貴重です。データは保存されるため、より柔軟なレシピ管理、既存のレシピの修正、および新たなタイプのビールの試作が可能になります。手順を機器が行なっても、オペレータが行なっても、醸造の技を損なうことなく品質の均一性が維持されます。
急速な需要増への優れた対応
クラフトビール製造メーカにとって、クラフトビールに対する消費者の需要とイノベーションおよび効率における競争レベルは、高まる一方です。
ビール醸造所が考慮すべき技術は、オペレーションの規模によって異なります。マイクロブルワリの年間生産量は最大15,000バレルで、その約75%以上が醸造所外で販売されます。この場合、醸造は手動モードで運用するか、単純な制御技術のみが適用されているでしょう。
一方、地域のクラフトビール醸造所が作るのは、ほとんどが「伝統的」または「革新的」なビールで、年間15,000バレルから600万バレルを生産します。小規模な醸造所は、半自動モードで、また大規模な醸造所は全自動モードで操業するでしょう。
規模に関係なく、これらの醸造所は今日のダイナミックな市場で競争することを望み、高品質の醸造を実現し、複雑な消費者需要に応えるためのシンプルで標準化されたオペレーションを必要としています。
より規模の大きい醸造
FactoryTalk Craft Brewは、より小規模な醸造所の成長をサポートするよう設計されていますが、FactoryTalk Brew™ソリューションを使って大規模なビール醸造所が生産を標準化し、完全自動化することができます。これによって、報告やレシピ管理向けの情報プラットフォームを構築し、オートメーションレイヤからの情報をMESレイヤに統合します。
これにより、企業レベルのオートメーションと情報を統合してコネクテッドエンタープライズを実現し、情報に基づくビジネス意思決定をサポートし、地域または世界的なビール醸造所が求めるFactoryTalk Craft Brewを超える機能要件を満たします。
このソリューションによって、従業員の特別なスキルセットへの依存を減らすだけでなく、操業開始時の負担、および醸造オペレーションの複雑さを軽減することができます。エンジニアリング重視のカスタムコードを使用したアプリケーションの必要性を解消するため、これらのスケーラブルなソリューションはデジタル化と改善を通してあらゆるサイズの醸造所の生産品質を高め、市場導入期間を短縮することができます。
競争上の優位性: 維持と獲得
アジア太平洋地域のビール市場は、2016年~2022年の予測期間に8.8%の複合年間成長率(CAGR)で成長すると考えられています。しかも、多くの経験豊かな醸造所にとって、自動化システムへの移行はたとえ不快であっても、必要なことです。
小規模な醸造所もあらゆる工程を手作業で行なう生産能力を上回る、規模の拡大を望みます。1日に8~10バッチの麦汁を醸造する必要がある場合、醸造所が成長を続けるためには、オートメーションが事実上唯一の方法となります。
自動化されたプログラムの最適化が完了すれば、オペレーションは毎回正確に同じ方法で実行され、一貫した、繰返し可能な生産が可能となります。オートメーションを未経験の醸造所でも、そのメリットを信頼し、評価することができます。優れた設計のシステムは、きわめて柔軟性が高く、必要な場合の変更や、新規のレシピのプログラミングを簡単に行なうことができます。
スケーラブルなモジュール式システムと、装置およびタイミングをよりよく利用することで、ビール醸造所はタンクの増設に投資せずに、生産量を最大50%増加させることが可能です。このように、高価な新型の10バレルシステムを導入しなくても、既存の5バレルシステムを自動化することで、より多くの量をより一貫して生産でき、お金と時間を節約することができます。
スケールアップの準備ができているビール醸造所の場合、革新的な技術を導入し、生産全体で醸造工程を合理化し、能力と稼働効率を拡大すべき時期です。機器とプロセスの管理に費やす時間を短縮することで、ビール醸造所は最も重要なこと、つまりビール造りに集中できるようになります。