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Automation Today Issue 64

未来のものづくりを設計する – デジタルツインの可能性

人、製品、プロセスをデジタルの世界に移行することによって、ビジネスの可能性は拡大します

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Automation Today Issue 64
未来のものづくりを設計する – デジタルツインの可能性
人、製品、プロセスをデジタルの世界に移行することによって、ビジネスの可能性は拡大します

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デジタルトランスフォーメーションからデジタルスレッド、デジタルツインからデジタルエンジニアリングへ - そのコンセンサスは「デジタル」が産業界の次の流行語だということです。しかし「デジタル」は単なる流行語なのでしょうか? それともそれ以上のものなのでしょうか?

今日、産業界は低価格を維持しながら、高品質の製品を短期間でかつ安全に生産するという課題に直面しています。デジタルテクノロジが実現したスマートマニュファクチャリングが、関連するリアルタイムの情報への容易なアクセスを提供し、製造メーカのオペレーションに大変革をもたらしています。情報対応型の製造で、御社の最大の課題に闘いを挑むことができます。

なぜデジタルテクノロジが必要なのか

デジタルトランスフォーメーションのメリットは、作業現場全体に広がっています。これには、コンプライアンスおよびデータの整合性の改善、製品品質と顧客体験の向上、そして生産性の上昇などが含まれます。また、販売される商品のコストを削減し、サプライチェーンの整合性を向上させることも可能です。

デジタルツインやデジタルスレッドのような概念について、恐らく聞いたことがあると思います。しかし、どういう意味なのでしょう? デジタルツインは、製品、機械、プラントのような資産のデジタルレプリカです。このレプリカは「生きて」います。つまり、資産が開発され、運用され、保守されるにつれて変化していくということです。また、設計、トレーニング、メンテナンスのようなプロセスを改善するために、画面または実体験のように感じさせる3D環境に表示することもできます。

デジタルスレッドとは、資産のライフサイクル全体にわたる、デジタルツインにより作成されたデータのデジタルトレイルのことです。このデータを理解しやすい洞察に変換し、資産がどのように運用されているか、運用されるのかを人々に知らせます。幸い、デジタルエンジニアリングは一か八かの戦略ではありません。最初のステップとして望ましいのは、御社のビジネスを検討し、デジタルアプローチを使用してどこをよりスマートに、より迅速に、より良くできるかを決定することです。

デジタルソリューションの構築

デジタルエンジニアリングには、御社のビジネスのさまざまな分野の改善に役立つ画期的な新しい方法があります。具体的には、この方法は以下の5つの重要な領域にグループ化されます。それは、設計とプロトタイピング、立上げ、オペレータのトレーニング、生産、そしてメンテナンスの5つです。

設計および試作

仮想設計と試作(プロトタイプ製造)により、生産した機械を市場に迅速に投入でき、設計のリスクを削減し、さらに高性能でよりカスタマイズされた機械を製造できます。これは機械の動作を観察し、どのように機械が人々や他の機械と相互に作用するか確認できる機能を提供します。

デジタルツインのモデルをVR環境に持ち込み、プラントフロアに自分がいるかのように目の前で機械の動作を監視することもできます。このおかげで、そうでなければ見過ごしてしまうような小さな問題や目につく問題を見つけることができます。変更の必要がある場合、部品を買って、数日かけて新しい試作品を作成するかわりに、ほんの何回かクリックするだけでデジタルデザインに変更を加えることができます。

ある食品メーカはデジタルツインを使用して、施設を実際にアップグレードする前に、アップグレードを試験して検証しました。これにより、その食品メーカはダウンタイムを80%も削減し、10%以上もスループットを向上させました。

試運転

機械を現場に持ち込むまで制御試験の実施を待つことは、大失敗を招く原因となります。

仮想試運転は、あらゆる問題を避けるのに役立ちます。機械設計および制御システムの実際のオペレーションのロジックの両方の動的なデジタルツインを作成することにより、お客様のプラントのフロアに機械を据付けるよりもずっと前、設計段階の初期に問題を発見できます。リソースを投入する前に、機械やコントローラを実際に動作させ、徹底的に検証できます。

トレーニング

今や、仮想トレーニングでは、デジタルツインを使用して、機械が到着する前に従業員をトレーニングできます。VRヘッドセットでスライドする、または画面から作業することによって、作業者は安全かつ実体験のように感じさせる仮想環境でスキルとコンピテンシを構築できます。

オペレーション

デジタルエンジニアリングの価値は、機械の立ち上げが完了し、オペレータがトレーニングされるとなくなるわけではありません。生産が始まると、デジタルツインはプロセス、機械、制御を模倣し、プラントの作業者がオペレーションについて学習し、変更を試すのを支援できます。ますます増加する情報のデジタルスレッドが、生産をどのように改善できるかについての洞察を明らかにできます。

実際、あるグローバルな製造メーカは、MES (製造実行システム)と一緒にデジタルスレッドを実装し、お客様へのリードタイムの50%の短縮、欠陥部品の50%の削減、生産性の4%の向上を実現しました。

メンテナンス

メンテナンスチームは、シミュレーションとリアルタイムの(または予測的な)洞察を使用して、今までにない方法でダウンタイムに取り組むことができます。デジタルスレッドを流れるデータのおかげで、技術者は発生時点で問題を検出し、ダウンタイムを防止し、最小化することができます。このデータには、メンテナンスが必要な時期を技術者に通知できる制御システムデバイスからの健全性データおよび診断データなどが含まれます。また、今日、稼働時間の維持に不可欠なスイッチレベルのアラームからのネットワークデータなども含みます。

ダウンタイムの発生予測により、メンテナンスチームがダウンタイムにまったく対応する必要がないのが理想的な姿です。これは予測分析の実用化のおかげで、今後ますます可能になっていきます。これらの分析ツールは機械学習や人工知能を使用して、オペレーションを学習し、早期に機械の問題を特定し、それらの問題を技術者に警告します。技術者は、計画されたダウンタイムの間にメンテナンスをスケジュールできます。

デジタルツインにより、鍵となるいくつかの方法で平均修復時間(MTTR)を改善できます。まず、仮想トレーニングを行なうことにより、技術者はダウンタイム問題が発生したときに初めてトラブルシューティングするのではなく、事前に問題に対して準備できます。そして、問題が実際に発生すると、技術者はARテクノロジを使用して実際の機械にデジタル診断または作業指示を重ね合わせて、迅速に診断し、問題を解決できます。

デジタルトランスフォーメーションの新たな段階

デジタル化は産業界に大きな利益を与え続けています。最近のレポート「The Internet of Things: Mapping Value Beyond the Hype」で、マッキンゼー社は、IoTが2025年までに合計で年に3.9兆ドルから11.1兆ドルの経済的影響をもたらすと予測しています。

デジタルトランスフォーメーションが今や「考察」段階を超えて、多大なビジネス結果を生むところまできているので、この見方は業界では非常に一般的です。実際、72%の製造企業は2020年にデジタル化の取り組みへの投資を大幅に増加させることを計画しています。PWC社によれば、これらの製造メーカの資金の投入額は合計で2020年に9070億ドルに達すると予測されています。

ロックウェル·オートメーションはこのほど、重要な7つの主要産業でデジタルトランスフォーメーション/IIoT決定に関わる経営者の役割、知見、意思決定への関与について、グローバルな一次調査を実施しました。調査対象業界は、石油&ガス、化学、金属&鉱業、ライフサイエンス、食品飲料、家庭用品&日用品、そして自動車です。

ロックウェル·オートメーションのデジタルトランスフォーメーション2020レポート」では、企業はデジタルトランスフォーメーションの取り組みに向けて検討段階を超えて動き出したことが明らかになりました。実際、2019年には、導入後に稼働しているデジタルトランスフォーメーションのプロジェクトは400%も成長しました。インタビューした企業の中で50%はすでに生産を開始したか、フルスケールの生産状態にあるか、または初期のデジタル化への取り組みに継続的にプロセスの改善を適用しています(図1を参照)。

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図1: デジタルトランスフォーメーションの段階

すべてをカバーするソリューションの価値

この調査で、多くの企業に成功のために必要な技術的な専門知識が不足していることが明らかになりました。調査した企業の中で、成功に必要なテクノロジに関して精通していると自己評価したのは1/3未満でした。特に、37%の回答者がAIについては「良く知っている」と回答したのに対し、IIoTについて知識があると回答したのはわずか33%です。拡張現実(AR)および仮想現実は29%、クラウド分析は31%、ロボット工学は27%でした。

回答者が全員同意したことは、包括的で一元化されたデジタルトランスフォーメーションの取り組みを効果的に展開し、維持する必要があることです。IIoTシステムが複雑であることを考えると、彼らは大規模な展開をサポートでき、端から端まですべてをカバーするパートナを期待しています。このソリューションは、MES (製造実行システム)および分析ツールに対応する必要があり、完全な産業用モノのインターネット(IIoT)プラットフォームとして動作する必要があります。

イネーブリングテクノロジ(実現技術)

近年、デジタルトランスフォーメーションのテクノロジは大きく進歩しました。どのようにしてこれらの実現技術がよりスマートでより安全な労働力を創造できるのかを評価するのにかつてないほどの最適の時期です。

拡張現実(AR)により、複雑なプラントフロアの問題を解決でき、人材の生産性と効率を改善できます。包装設計ソリューションの業界の第一人者であるHarpak-ULMA社はFactoryTalk® InnovationSuite, powered by PTCとVuforia拡張現実プラットフォームを使用して、最近デジタルトランスフォーメーションのソリューションを実装しました。この新しいソリューションにより、同社のIoT接続性が拡張しました。機械学習と予測分析を使用して、Harpak-ULMA社は、メンテナンスのビジネスモデルとお客様のコスト構造を改革することができました。

今日の製造業が直面しているもう1つの一般的な課題は、機械や生産ラインの設計、立上げおよびスタートアップの従来の方法はコストが高く、製品の市場投入に要する時間の短縮の妨げとなっているということです。そのため、多くの消費財(CPG)製造メーカは、仮想空間で自分たちのプロセスを調査し、試験し、検証するためのツールとしてエミュレーションを採用しています。消費財企業はエミュレーションテクノロジを駆使して、大幅に立上げ時間を短縮しています。視覚化、設計ソフトウェアおよびトレーニングの進歩により、実務に導入するのが以前よりも簡単になりました。

Emulate 3Dは、仮想立上げ、スループットシミュレーション、および産業用デモンストレーションのための動的なデジタル·ツイン·ソフトウェアを開発しています。実際のオートメーションシステムのかわりに、現実的なフィードバックを提供する3Dモデルを使用して、関係するコストとリスクを削減しながら、お客様の機械と生産ラインに息吹を吹き込む仮想シミュレーションと試運転を活用するチャンスを提供します。

機械装置メーカ(OEM)向けのデジタルテクノロジ

よりスマートなIoT対応機械の需要は、急激に増大しています。こうした需要を満たすために、市場ではデジタルトランスフォーメーションのテクノロジを活用し、機械装置メーカがオペレーションを改革することが強く求められています。

エンドユーザの施設で迅速かつコスト効率よくスマートマシンと統合することは、多くの機械装置メーカにとって重要な課題です。幸い、これには画期的な制御システム設計ツールが役に立ちます。この新機能の中核は、タグ構造の一部となる「スマートオブジェクト」を設定可能にするシステム設計の指示事項です。スマートオブジェクトは、どんなデータを収集するか、そしてどのようにして、いつそのデータを収集するか特定します。スマートマシンの制御システム設計へのこの新しいアプローチは、機械がプラントフロアに到達する前の統合プロセスのもっとも手間のかかる部分の1つを効率化します。

拡張現実(AR)、複合現実、仮想現実などの最新の視覚化テクノロジは、作業者の能力を強化し、より安全で、より生産的なプロセスを生み出すことにより機械装置メーカを支援できます。視覚化テクノロジは、装置メーカのインテリジェンスをエンジニアのデバイスに直接ストリーミングする機能を提供します。協力して機械を点検し、追加情報を収集し、問題の根本原因を特定し、数日ではなく分単位で修理ソリューションを提案します。

障害の克服

すべての産業にとってのデジタルトランスフォーメーションの利点は否定できませんが、デジタル化の取り組みのほとんどが完全に実装する前に失敗していることに注意することが重要です。最近のガートナー社の調査では、すべての市場分野で85%のビッグ·データ·プロジェクトは失敗すると推定されています。

新しいデジタルトランスフォーメーションの取り組みを実装する場合、以下のような多くのリスクに注意しておく必要があります。

デジタル化に対する理解不足

会社にとって、デジタルトランスフォーメーションが意味することを定義するのが重要なように、デジタルトランスフォーメーションが意味しないことを定義するのも重要です。企業は、デジタルトランスフォーメーションが自分たちのビジネスにとって何を意味するか、そして自分たちが何を達成したいかを明確に定義する必要があります。デジタルトランスフォーメーションはテクノロジ、プロセス、および人々の構成物であり、これをビジネストランスフォーメーションの実現要因として位置付けなければなりません。

スタンドアロン戦略としてのデジタルトランスフォーメーション

最近のMIT Sloan社の調査によると、企業戦略を実行するのに責任がある経営者および中間管理職のうち、自社の戦略的優先事項のうちの3つを挙げられるのは、わずか28%であることがわかりました。デジタルトランスフォーメーションが全体的なビジネス戦略に組み込まれていない場合、プロジェクトは長期の成功を実現するレベルの優先順位付けや資金提供を受けません。

問題思考ではなくテクノロジ思考

デジタルトランスフォーメーションの取り組みが進むにつれて、経営陣やスポンサー、メンバー、またはプロジェクトチームの要望で技術的ソリューションが追加されることがしばしばあります。しかし、それは、テクノロジに関しては、より多くのテクノロジが、必ずしも、より優れたテクノロジとなるわけではないということを覚えておくのは重要です。

人材のスキルの課題

デジタルツールの使用は、しばしば技術的な努力とみなされます。しかし、デジタルソリューションの採用と使用には単なる技術的なスキル以上のものが必要でした。企業は、採用の取り組みを、技術的な専門知識を欠いている候補者を排除せずに、デジタルリテラシと好奇心を持つ人材を見つけることに集中させる必要があります。

カスタムアプリケーションと社内アプリケーション

カスタム·ソフトウェア·ソリューションは、最初は完璧に思えるかも知れませんが、カスタムアプリケーションは大抵の場合、アプリケーションを構築した人以外は更新も変更もできないことを頭に入れておくことは重要です。ただし、構成ベースの新製品は、カスタムソリューションを構築するために過剰な時間やリソースを費やすことなく、拡張現実(AR)やサプライチェーンのシミュレーションのような体験を開発および導入できます。

拡張計画の欠如

New Everest Group社による最近の調査によると、今日の企業の78%はデジタル化への新たな取り組みを拡張するのに失敗していることが明らかになりました。デジタルトランスフォーメーションは縦割り手法で実施されることがよくあります。そのような手法では、企業は組織全体での拡張性を計画するのに失敗します。スケーラブルな分析は、ユニット単位のオペレーションのデータ分析体験を開発することができるだけでなく、企業の異なる分野に拡大させることも可能です。

明確なビジネスケースや投資の回収がない

デジタルトランスフォーメーションの価値があまりにも明確なので、各プロジェクトの取り組みを定義するのに時間をかけず、関連した価値やリスクに注意を払わないでプロジェクトを突き進めてしまうことがよくあります。これを見失わないようにするには、どのプロジェクトコンポーネントを開始し、継続し、中止するか優先順位付けすることが重要です。そうすることにより一番良い取り組みを選択できるだけでなく、戦略としてモニタすべき次善のセット、および廃止すべき最悪のビジネスケースを特定できます。

好ましくないサプライヤとパートナシップ

今日、私たちの周りには無数のベンダーによるテクノロジソリューションが溢れています。多くの場合、こうしたベンダーは自分たちのソリューションを売ることにだけ集中しているので、ソリューションが購入者の妥当なビジネスニーズに適合しているのか確認するのを怠ることがあります。企業は、最新のイネーブリング·デジタル·テクノロジを理解し、これらのテクノロジをビジネスのニーズに結びつける経験があるサプライヤを探し求める必要があります。

旧式のインフラの統合の課題

Manufacturing Performance Institute社によるレポートによると、すべての製造メーカの中で自己のビジネスプロセスを十分に管理するビジネスシステムを持っているのは50%に過ぎません。幸いなことに、新しいIoTプラットフォームは旧式のシステムを容易に統合できます。完全なオーバーホールは不要です。

すべての製造メーカの中で、自己のビジネスプロセスを十分に管理するビジネスシステムを持っているのは50%に過ぎません。

デジタルワールドへの参加

デジタルエンジニアリングは、将来の基盤です。産業に必要なテクノロジを提供し、最大の課題に対応します。デジタルトランスフォーメーションに取り組む場合、重要なことは戦略を定義することと、明確なロードマップの概要を描くことです。

デジタルトランスフォーメーションを到達する目的地としてではなく、旅として取り組むことが大切です。適切な定義と計画、人材のスキルのアップグレード、デジタル化の取り組みに企業全体を統合することにより、デジタルトランスフォーメーションは驚くべき結果をもたらすことができます。

タグ: デジタルトランスフォーメーション, FactoryTalk Emulate3D
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