お客様へのご提案
スマートフォンやその他のデバイスに搭載されている小さいが強力な半導体は、製造に数週間もかかり、何百というステップを必要とすることがあります。生産時に、洗浄溶剤はこれらの小さく繊細なマイクロエレクトロニクスの高レベルの純度を維持するのに重要な役割を果たします。
カリフォルニア州ヘイワードにあるデュポン社の小ロットの生産施設は、多数の品種の洗浄溶剤を製造しています。残念なことに、プラントで使用しているバッチ制御システムは、近年、老朽化の兆しを見せ始めました。
システムはすでにサポートされていませんでした。オペレータをいらつかせるアラートや対応が難しいアラームのような生産上の問題も引き起こしていました。さらに重要なことに、顧客監査は生産工程での品質管理を改善できるレシピベースのオートメーションが欠けていることを発見しました。
プラントは次のような選択に直面しました。旧式のバッチ制御システムを交換するか、現状のままで毎月何千ドルもビジネスで失うか。プラントのアップグレードに取り組むことにしました。アップグレードすることにより、品質管理を改善するだけでなく、プラントのスループットを向上し、新たな月間売上を達成できるようにすることにしました。
アップグレードの必要性
ヘイワードの旧式の制御システムの大半は手動式のシステムでした。貯蔵タンクから混合タンクへの材料のバルクでの添加だけが自動化されていました。オペレータは、ドラムポンプステーションと固体搬送ステーションを使用して他のすべての材料を手動で追加していました。また、オペレータは材料をブレンドし、フィルタを循環させ、製品サンプルを採取するタイミングも設定していました。目的の製品が完成したら、オペレータは手動で梱包エリアの充填システムに送りました。ここで、作業員は1ガロンおよび5ガロンのコンテナから200ガロンのトートまでのパッケージに製品を分配しました。
これらの手動プロセスは、潜在的にエラーの可能性を招きました。例えば、オペレータは材料を15分間混合するつもりでしたが、他の業務を実行するために時間を取られて、18分間も混合してしまう場合があります。このような例は、わずかなばらつきがある製品を生産する可能性があります。
しかも、旧式のシステムは、ときおり生産を中断させました。デュポン社のオートメーションとプロセス制御エンジニアコンサルタントであるナンシー・ギブンズ氏は次のように述べています。「HMI (ヒューマン・マシン・インターフェイス)はバルブを開閉するたびにポップアラートを生成するように構成されていました。オペレータが3つのバルグを開きたいとすると、3つのポップアップが表示されます。これはオペレータをいらいらさせました。しかも、これはエラーを誘発します。整理されていないインターフェイスにより、オペレータが間違ったバルブを開閉する可能性がありました。」
アラームはもう1つの問題でした。旧式のシステムは、ハードコードされたアラームセットポイントと、ユーザが編集可能なアラームセットポイントを組み合わせて使用しており、ハードコードされたアラームは対応するのが難しく、オペレータはしばしば問題のコードを特定するのに悪戦苦闘していました。また、アラームも優先順位を割当てる機能のようなアラームのベストプラクティスを使用していませんでした。
より優れた品質管理へのお客様の要求と相まって、問題解消には制御システムのアップグレードが必要になりました。
フェーズ1: コントロールのアップグレード
ギブンズ氏はシステムインテグレータTechKnowsion社とデュポン社のグローバル・アライアンス・サプライヤであるロックウェル・オートメーションと連携し、コントロールのアップグレードを計画し、実行しました。チームは2段階アプローチを使用してアップグレードを実行しました。
最初のフェーズでは、バッチシステムのプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)およびHMIをPlantPAx分散制御システム(DCS)と交換しました。これには、新しい制御コードの要件を決定するために、旧式のPLCコードをリバースエンジニアリングすることが含まれました。ギブンズ氏は次のように述べています。「単にコードを複製したり、変換するつもりはありませんでした。システムの機能要件にまで遡り、大幅にコードをクリーンアップし、改良しました。次にこのコードをPlantPAxベースのプロセス・オブジェクト・ライブラリに組み込みました。ライブラリは、長年にわたってデュポン社内で特定のニーズに合わせてカスタマイズされていました。」
制御システムの新しいHMIは最新の視覚化手法を使用して、オペレータに優れた視聴体験を提供します。ギブンズ氏はまた、次のように述べています。「旧式のHIMIインターフェイスは複数の色を使用し、画面が雑然とすることがありました。新しいグレースケールのHMIは重要な項目をハイライトし、重大な問題をオペレータに警告します。新しいHMIを実装してから現場の抜き打ち検査を実施しましたが、当社のオペレータは常にどこに注意を払えばいいのかわかっていました。決して何も見逃すことがありません。」
フェーズ2: バッチオートメーション
フェーズ2では、ロックウェル・オートメーションのグローバル・ソリューション・チームがデュポン社と直接連携し、FactoryTalk Batchソフトウェアを構成してインストールし、完全なレシピ制御とシーケンシャルオートメーションを実現しました。
ギブンズ氏と彼女のチームは、バッチシステムの実装に際して、そのフレームワークを展開するISA S88規格に準じたものにすることを望んでいました。このためには、ロックウェル・オートメーションは最初に生産機器の物理モデルを構築し、その後に自動化生産フェーズの手順モデルを作成する必要がありました。これらのフェーズは、別のレシピで必要な場合はいつでも使用できる構成要素として機能します。
ギブンズ氏は次のように述べています。「バッチソフトウェアのフェーズ管理機能によって、S88規格に確実に準拠することができるようになり、大幅に時間が節約できました。チームは、ミキシングや添加のようなフェーズを一度設定すれば、その後、何度でも再利用できるようになりました。これはレシピごとに新しいコードを作成するよりもはるかに効率的です。」
また、チームはサンプリングやレシピレビューのような手動プロセスにもバッチソフトウェアを活用しています。ソフトウェアは自動フェーズに一体化する手動フェーズを提供し、ユーザが手動フェーズと自動フェーズの間をシームレスに操作できるようにします。ギブンズ氏は次のように述べています。「私たちはこの機能をデュポン社全体で広範囲に使用しています。この方が、コントローラに手動のプロセスコードを書込むよりも簡単でスムーズなことがわかりました。」
最後に、チームはロックウェル・オートメーションと連携して、プラントの貯蔵タンクの材料を追跡するソフトウェアをインストールしました。このソフトウェアは、手作業による在庫の追跡を必要とした紙ベースの記録システムを置き換えました。
ソフトウェアは、自動のタンク切換えも実現しています。ギブンズ氏は次のように述べています。「以前には、添加フェーズでタンクに材料がなくなると、オペレータはどのくらいの量の材料が追加されたかを追跡し、タンクから必要な残量を計算しなければなりませんでした。今では、ソフトウェアが自動的に必要な材料の残量を計算し、タンクを切換え、設定値に達するまで必要な量を追加します。」
品質管理とスループット
新しいオートメーションシステムは、予定されたダウンタイムの間の1週間ですべて実装されました。アップグレードにより、陳腐化したプラントは完全にサポートされたプラットフォームになりました。さらに、最新のHMIは従業員を苛立だせていたポップアップとアラーム管理の問題を解決しました。
ロックウェル・オートメーションのライブラリのプロセスオブジェクトにより、設計、構成、配備の時間が短縮されました。ギブンズ氏はライブラリがプログラミング構成時間を40%も短縮したと推定しています。今日にいたるまで新システムは順調に稼働し、ライブラリは効率的に節約する方法を提供し続けています。
ギブンズ氏は次のように述べています。「ライブラリはメンテナンスとトラブルシューティングに有効です。ディスクリプションを開いて変更したい場合、エンジニアリングワークステーションまたはプログラミングソフトウェアを使用する必要はありません。フェイスプレートを使用してHMIで適切に処理できます。または、バルブが開かない場合、オペレータはフェイスプレートを開いて、インターロックアイコンを開き、問題を確認できます。過去には、従業員はバルブのインターロックを確認するために画面を設定しなければならないか、問題をトラブルシューティングするために紙の書類を精査しなければなりませんでした。今では、ほんの数回クリックするだけで答えが得られます。」
その一方で、バッチソフトウェアにより、プラントは非常に限定されたオートメーションから自動洗浄工程を含む完全なバッチオートメーションになりました。これにより、デュポン社のプラントはお客様が望んでいた品質管理のレベルを達成できるようになりました。異なる生産ユニットの間の整合性を改善するためにソフトウェアを調整した後で、プラントのスループットは大幅に増加しました。