課題
- オフショア石油生産システム2基で旧式のサーバが原因で計画外のダウンタイムが頻発、長期的なソリューションの必要性が浮き彫りになった。
ソリューション
- 仮想化 - 高可用性の仮想化サーバが物理サーバの大半を置き換え、貴重な船内スペースを解放し、稼働率を向上
結果
- クリティカルなダウンタイムの短縮
- コミッショニング時間の短縮
- ディザスタリカバリ(災害復旧)速度の向上
1859年、ペンシルベニア州の農場で原油が発見され、アメリカの石油産業は誕生しました。しかし、陸地から遠く離れた沖合で石油を掘削しようとする探鉱者が現れるまでには、1世紀近くの時間が必要でした。
1947年、ルイジアナ州の沖合10マイルに最初の「人目につかない場所に」石油プラットフォームが設置されました。それ以来、何千もの油井がメキシコ湾の石油資源に穴を開け、現在では全米の石油の5分の1近くを供給しています。
世界最大級の資源会社が、ルイジアナ州南方約120マイルの深海に位置するメキシコ湾で2つの石油プラットフォームを運営しています。他の巨大石油企業同様、同社も外洋で孤立したプラットフォームを運用する上で直面する課題に対処するため、ますます高度な技術を適用しています。時折襲うハリケーンなどの過酷な環境は、その始まりに過ぎません。
揮発性物質を年中無休の24時間体制で、極端な圧力下で抽出するためには、生産、人、環境を保護するための精密な制御が必要です。コストのかかるダウンタイムを最小限に抑え、脅威となる前に異常を検出するためには自動化されたオペレーションとモニタシステムが重要となります。
老朽化したサーバがもたらすリスク
天然資源会社は、2つの海上生産システムを同じ制御システムで1年以内に稼動させました。最初のプラットフォームは2007年に稼働を開始し、2番目のプラットフォームはメキシコ湾で最も深い石油掘削施設の1つで、2008年に稼働を開始しました。
2012年になると、自動制御装置の老朽化が目立ってきました。
同社の計装および自動化のエンジニアは次のように述べています。「サーバの調子が悪くなり、システムを稼働させるのが大変なことになりました。ほぼ毎週、サーバの故障のためにヘリコプターでプラットフォームまで飛んでいかなければならないほどでした。」
停電でサーバが停止した場合、復旧には1台1台、決められた順序でサーバを再起動させるという時間のかかる作業が必要だった。2007年に作られたプラットフォームは10台、少し新しいプラットフォームは25台のサーバを搭載していました。
搭載されているコンピュータも旧式で、新しいソフトウェアを動かすことができません。特に、HMI (ヒューマン・マシン・インターフェイス)システムの信頼性が問題となりました。
エンジニアは次のように述べています。「HMIシステムは、常に利用可能でなければなりません。もしダウンしたら、50〜60人がプラットフォーム上にいて、何が起こっているのか把握することができません。」
同社のエンジニアリングチームは、アップグレードオプションの検討を開始しました。その目的は、稼働時間の増加、ディザスタリカバリの迅速化、オートメーションシステムの保守・管理の簡素化でした。また、導入やアプリケーション開発を迅速に行えるようなソリューションも求めていました。
そして、オペレーティングシステムと物理的なハードウェアの間のリンクを断ち切るためにソフトウェアを使用する仮想化が、最も良い方法であることをすぐに認識したのです。
エンジニアは次のように述べています。「コストベネフィット分析も実施しました。長期的には、物理サーバを仮想化環境に置き換えることで、我々のオペレーションが要求する高い可用性を実現することができるのです。」
この決断は、オフショア生産システムに適した仮想化ソリューションをどのように設計し、導入するのがベストなのかというさらなる問題を提起しました。
仮想化ハードウェアを一から設計し、カスタムビルドするというDIY的なアプローチも検討されました。しかし、その場合、会社のIT部門が適切な機器を指定し、場合によっては複数のベンダーから調達し、システムを製造してテストしてから試運転を行なう必要があります。「私たちは、純粋に調整要件にかかるコストが高いという理由で、昔ながらのアプローチを断念しました」と、エンジニアは語ります。
陸上での設計、オフショアでの配備
そのかわりに、同社はターンキー仮想化ソリューションを求めてロックウェル・オートメーションに依頼しました。
「ロックウェル・オートメーションとの取引の経験から、必要な専門知識を備えていることは分かっていました」と、エンジニアは語ります。ロックウェル・オートメーションのプログラマブル・ロジック・コントローラとHMIは、両プラットフォームのオフショア生産システムで使用されていたものです。「ロックウェル・オートメーションとの提携により、システム設計、すべてのハードウェア、サーバの立上げサポート、さらに必要な場合の長期的な技術支援を一手に引き受けることができるようになりました。」
2つのプラットフォームでの生産停止時間を最小限に抑えるため、新しいシステムは陸上で構成し、テストする必要がありました。
エンジニアは次のように説明しました。「オフショアへの切換えを行なう前に、新システムを稼働させ、すべての部品が適切に通信していることを確認する必要がありました。どんな不都合も許されなかったのです。」
同社は、まず小型で古いリグをターゲットにしました。ロックウェル・オートメーションのエンジニアは、必要なハードウェアとソフトウェアコンポーネントを組み込んだ産業用データセンター(IDC)などの仮想化ソリューションを 設計しました。ロックウェル・オートメーションのチームは、陸上で仮想化システムを構成し、同社の技術チームにト レーニングを提供し、技術チームがテストを実施しました。
2ヵ月後、プラットフォームの仮想化システムの準備が整いました。新しいハードウェアを設置し、リグ上で稼働しているすべてのマシンを置き換えるために仮想マシン(VM)を作成し、古いコントロールと並行して本番切換えを行なう時が来ました。切換えは滞りなく行なわれ、ダウンタイムもありませんでした。
6ヵ月後、2番目のプラットフォームの新システムが同じ切換えプロセスで導入されました。ここでも、ダウンタイムはありませんでした。
仮想化のメリット
現在、両リグのオフショア生産システムは、アップグレードされたわずか3台の物理サーバで運用されています。残りのサーバは高可用性の仮想化サーバに置き換わり、貴重な船内スペースを確保しました。しかし、設置面積の縮小は、仮想化のメリットの始まりに過ぎません。
エンジニアやプラットフォーム担当者は、もうサーバのクラッシュを心配する必要はありません。障害が発生した場合、仮想化サーバクラスタが自動的に対応し、影響を受けたVMを他のホスティングリソースで再起動します。VMware vSphere®フォルトトレランスでは、1つのVMを2台の物理サーバで同時に実行できるため、重大な障害からVMを保護することができます。
この復旧の早さは、資源会社の経営陣にとって仮想化の最大のセールスポイントでした。
このエンジニアは、オフショア導入前に上司にシステムのデモンストレーションを行なったが、「サーバを停止させても、別のサーバで復活します。止めるわけにはいかないのです。」
ソフトウェアのアップグレードやOSパッチの適用も簡単です。新システムでは、オペレータが現在のソフトウェア構成の「スナップショット」を取得し、変更を実施し、必要に応じて以前の構成に戻すことができます。この機能は、システム変更のリスクも軽減します。
仮想化システムの導入後、プラットフォーム作業員は当初、停電後のリグへの電力供給の復旧が容易になるかどうか疑っていました。しかし、新システムが実際に稼働しているのを見るまでは。
エンジニアは次のように述べています。「サーバを1台ずつ再起動させるのではなく、3つのボタンを押すだけです。そうすれば、システム全体が自動的に起動し、すべてが自動的にシーケンス化されます。」
オフショア生産システムを仮想化することで、エンジニアが2つのプラットフォームで過ごす時間は大幅に減りまた。
「数年前までは、毎週半日を費やして、これらのサーバを動かすための作業を行なっていました。新しいシステムを導入してからは、一度も触る必要がなくなりました」と、語ります。
上記の結果は、ある資源会社がロックウェル・オートメーションの製品およびサービスを他の製品と組み合わせて使用した場合に固有のものです。具体的な結果は、他のお客様とは異なる場合があります。
vSphereはVMwareの商標です。
公開 2015/11/19