ロックウェル・オートメーションのEMEA地域デジタル設計およびSaaS担当の戦略的ビジネス開発者である二コラ・アイオヴィーンは、次のように結論付けています。「Emulate3Dは、より多くの企業がデジタルツイン技術の導入による大きな利点を認識するにつれて、産業用設計における強力な選択肢となりつつあります。今回のECMテクノロジーズ社による事例は、何が達成できるか、設計と立上げがいかに合理化されるかを示すリアルショーケースです。私たちは、ECMテクノロジーズ社がデジタル領域でさらなる進化を遂げるのを楽しみにしています。」
- 熱処理は複雑な多段階プロセスであるため、設計を図面から製作および設置と立上げに移す際に多数の課題が生じる。
- バーチャルコミッショニング、スループットシミュレーション、産業用デモ向けのEmulate3Dデジタル・ツイン・ソフトウェアを含むロックウェル・オートメーションのソリューションを導入
- MATLABを含む不可欠なサードパーティのソフトウェアとのシームレスな双方向接続と相互作用性が実現した。
- PLCコードの多くは、ラインの納入前に十分なシミュレーション、微調整、仕上げが行なわれた。
- 事前シミュレーションにより、クリティカルパスのリードタイムを数カ月短縮した。
- 顧客のソフトウェアに完全移行した場合でも、立上げ時間を50%短縮した。
- プロジェクトは予定通りに納品され、ECM社は納期遵守に自信を深めた。
- 現場でのミーティングや海外出張の必要性が減った。
- プロジェクトを仮想化することで、ECM社はより多くのプロジェクトを同時に管理できるようになった。
デジタル・ツイン・ソリューションと、クラスをリードするプロセスシミュレーションおよび視覚化ソフトウェアを組み合わせて、その両方を大規模な熱処理設備に適用すると、金属製品の硬度は高まりながらも、設計、設置、立上げははるかに簡単になります。
Emulate3D™ソフトウェアを導入したおかげで、革新的なモジュール式低圧浸炭工業炉の設計と製造で世界をリードするECMテクノロジーズ社は、大規模な熱処理プラントの開発、テスト、展開に関連する設置および立上げの課題の多くを取り除くソリューションを開発しました。
特に自動車産業の生産量について語る場合は、大規模な熱処理は決して小さな仕事ではありません。現代的な熱処理設備は工場全体を占めることもあり、その複雑さも相まって、従来は能力について定評のある企業に外注していました。
しかし、リーンオペレーションの原則、コスト管理、ジャスト・イン・タイムの製造と供給を念頭に、一部の自動車工場では、熱処理機能を社内および現場に導入しようとしています。そして、デジタル化されたプロセス制御とデジタルツインを組み合わせることで、ECMテクノロジーズ社は、設置前に従来のリスクの多くを設計することで、これを完全に実現可能にしました。
課題
熱処理は複雑な多段階プロセスであり、品質と一貫性を維持するために、多くのプロセス変数をすべて正確に制御する必要があります。ECM社の低圧浸炭プロセスでは、鋼鉄部品に炭素を浸透させ、耐摩耗性と耐疲労性を向上させます。同社が開発した真空プロセスでは、各工程の長さや極めて重要な真空圧を含む多数の変数を制御することで、金属に拡散する炭素の量を正確に制御することができます。
ECMテクノロジーズ社のオートメーションの専門家であるクリスチャン・デュギット=ピナト氏は次のように述べています。「数多くの段階があります。まず、熱処理前に部品を洗浄し、浸炭によって真空中で硬化させます。この処理には最大6時間かかることがあります。その後、ガス焼き入れまたはオイル焼き入れによって急冷され、焼き戻しと最終処理が施されます。全体として、典型的な自動車用ギアボックスの部品を作るには、約10時間から13時間の処理が必要となります。」
また、次のように付け加えました。「当社の電動式熱処理プラントは、マルチチャンバー設計を採用しているため、複数の部品がそれぞれ独自の熱処理「レシピ」で並行してラインを通過し、一度に50~80の負荷が移行します。最大限の品質レベルを確保するために、これらの負荷はそれぞれ個別に制御され管理される必要があります。」
ソリューション
現代のオートメーションは、最適化されたパラメータ内でこれらのプラントを管理する能力を十二分に備えていますが、設計、設置、立上げは別の問題であり、多くの問題や機能強化は、スタートアップ段階で初めて明らかになります。
ECMテクノロジーズ社のプロジェクトマネージャであるフィリップ・レイモン氏は次のように説明します。「メキシコにある大規模な自動車工場に、ICBPジャンボ真空浸炭システムを設置することになりました。私たちはさらに多くの課題に直面しました。一刻も早く生産を立ち上げる必要があっただけでなく、お客様から自社のソフトウェア標準を使用するよう指示されたため、既存のコードを全面的に書き換える必要があったのです。これに加えて、このような大規模な注文の通常の時間枠と複雑さが重なり、私たちは手いっぱいになってしまいました。そこで、プロジェクトをより合理化し、より迅速に展開する方法を検討し始めました。」
ECM社は、このようなニーズに対応できるソリューションとしてデジタルツイン技術を検討していましたが、このプロジェクトがきっかけとなり、ロックウェル・オートメーションのEmulate3Dソフトウェアを積極的に導入することになりました。
レイモン氏は次のように説明します。「メキシコにこの設備を設置することになったとき、ロックウェル・オートメーションのエンジニアの協力を得て、Emulate3Dを使用してシミュレーションを行なうことにしました。このプロジェクトは大規模で、構築したプロジェクトでPLCコードを書き換えてテストすることは、時間的な観点からまったく非現実的でした。そのため、仮想化モデルがそのソリューションであることは明らかでした。」
また、次のように続けました。「仮想化には大きな利点があり、その1つが他のソフトウェアとの接続性でした。設計の機械的側面のシミュレーションだけでなく、熱力学、プロセス物理学、さまざまなフローも考慮する必要があったため、MATLABを使用しました。MATLABは結果を直接デジタルツインに送り返すことができます。」
結果
ECMテクノロジーズ社では、Emulate3Dを使用することで、ラインの納入前にPLCコードの多くの十分なシミュレーション、微調整、仕上げを行なうことができました。また、設置後に直線的にコードをデバッグするのではなく、生産と並行してコードをデバッグすることで、ICBPジャンボプロジェクトのリードタイムを最大5カ月短縮できると見積もっています。
レイモン氏は、次のように付け加えました。「7年前にも、ロックウェル・オートメーションの制御ソリューションやEmulate3Dソフトウェアを使用せずに、同じような設置を行ないました。このプロジェクトでは自社独自のソフトウェアを使用していましたが、それでもプロジェクトは非常に複雑でした。逆に、この新しいプロジェクトは納期に間に合っただけでなく、立上げ時間が50%も短縮されました。お客様独自のコードを使っても、この2つ目のプロジェクトの方が早かったのです。また、現場でのミーティングも少なかったので、北米との往復の出張費も削減できました。」
ECMテクノロジーズ社はその後、このお客様から別の注文を獲得し、他の機会についても問い合わせを受けています。「お客様は、私たちがこのプロジェクトのコードをすべてゼロから書いたことを知っており、設置と立上げの早さに感心していました。現在、他のプロジェクトでもEmulate3Dを使用することを検討しており、現在3つのプロジェクトが進行中です。私たちは間違いなくデジタルツインを社内の手順の一部として導入するでしょう。プロジェクトを仮想化することで、アウトプットの品質とスピードが向上し、お客様の工場にいる時間が短くなるため、より多くのプロジェクトを同時に管理することができます」と、レイモン氏は説明し締めくくりました。
公開 2024年2月1日