かつて産業用制御システムは、インターネットに接続されていなかったことから、ハッカーによる攻撃に対して比較的安全であると考えられていました。しかし今日では、デジタル化の進展やITとOTの融合に伴い、その状況は一変しています。その結果、OTネットワークの相互接続性が飛躍的に高まり、ビジネスや顧客のニーズ、そして期待に応えるための基盤が構築されています。
こうした接続がリスクを生じさせる可能性があることから、英国国立サイバーセキュリティセンター(NCSC)は、連邦捜査局(FBI)やサイバーセキュリティ・インフラ・セキュリティ庁(CISA)を含む複数の国際的なサイバー関連機関と連携し、「OT (制御技術)向けのセキュアな接続に関する原則」(Secure Connectivity Principles for OT)」を公開しました。これらの原則は、運用上のリスクを抑制しつつ、システム間の接続を実現できるよう支援することを目的としています。
本ブログでは、「OT (制御技術)向けのセキュアな接続に関する原則」の重要性、その内容、そして実際の適用事例について解説します。
「OT (制御技術)向けのセキュアな接続に関する原則」が重要である理由
これらの原則を遵守することは、プラントが行なう接続が、運用上の安全や機能性に悪影響を及ぼさないという確信をもたらす助けとなります。これらのガイドラインは、戦略的なロードマップとしての役割を果たし、施設の信頼性を損なうことなく、イノベーションと安全のバランスを巧みに保つための指針となります。
ITとOTの融合
長年にわたり、IT (情報技術)とOT (制御技術)はそれぞれ異なる世界で存在してきましたが、今日、それらの世界は融合しつつあります。
- メリット: ITとOTの融合により、リアルタイム分析や予知保全が可能となり、機器が故障する前に修復を行なうことができるようになります。
- 問題: 多くの工場システムは、最新のセキュリティ要件を想定して設計されていない、陳腐化した技術や旧式の技術に依存しています。
- 脆弱性の発生源: こうした旧式の機器を最新のネットワークに接続することは、本来その機器が対処できるようには設計されていなかったリスクを招き入れることにつながります。
OT環境における影響
OT環境においては、そのリスクが物理的な性質を帯びているため、事態の重大性がより高くなります。
- 安全および身体的危害: OT環境におけるセキュリティ侵害は、機器の誤作動を引き起こしたり、作業員に身体的な危害を及ぼしたりする可能性があります。
- 環境への影響: 不正侵入により安全機構が正常に機能しなくなり、その結果として化学物質の漏洩や環境破壊を招く恐れがあります。
- サービス中断: 社会にとって不可欠なサービスを提供する事業者にとっては、システムの停止が地域社会や国家インフラの機能不全を招く事態となり得ます。
差し迫った脅威
産業用システムはもはや、ハッカーにとって「対象としてニッチすぎる」存在ではありません。今やこれらは、国家の支援を受けたアクターや、機会を捉えて攻撃を仕掛けるハクティビスト、さらには外部に露出したインフラを探索しているあらゆる攻撃者にとって、格好の標的となっています。もし貴社の制御システムが、インターネット上のスキャンツールによって検知可能な状態にあるならば、発見され、攻撃の対象となる恐れがあります。
Stryker社に対する「Handala」によるサイバー攻撃は、まさにその好例と言えます。この親イラン派のハクティビスト集団は、Microsoft Intuneを通じて接続されていた20万台以上のシステムおよびデバイスから、データを消去しました。この攻撃により、管理用コンソールに接続されていたサーバ、モバイルデバイス、その他のシステムに障害が発生し、業務に支障をきたす事態となりました。
「OT (制御技術)向けのセキュアな接続に関する原則」の定義
以下に、その原則の内訳と、それぞれの意味について説明します。