強固なエッジ管理ソリューションの5つの柱

市場動向

エッジコンピューティングのパラダイムが到来し、産業界はその恩恵を受ける態勢を整えています。分散したタッチポイントでの相互作用のデジタル化や資産の計装化が進み、エッジでのデータ作成と処理が大きく促進されています。また、デジタル･ビジネス･ソリューションでは、データセンター外へのデータ配信の必要性が高まっているため、エッジでの待ち時間(レイテンシ)の短縮やローカルデータ処理への要求も高まっています。さらに、現場での作業負荷とガバナンスの実践のために、データのセキュリティ、品質、ライフサイクル管理をエッジで行なうことが重要であると考えられています。つまり、これまで十分なサービスを受けてこなかったOT部門は、簡素化、効率化、セキュリティに重点を置きながら、エッジにおけるダイナミクスを急速に変化させているのです。

エッジへの拡張の準備

これらの課題に効果的に対処するために、IX (Internet Exchange: プロバイダ同士やネットワーク管理組織の間を結ぶインターネット相互接続点)のリーダは、エッジコンピューティング機能の必要性を長期的に明示する戦略を構築する必要があります。エッジの展開を最大限に成功させるためには、組織内のOTおよびIT担当者を割当て、最新のエッジ管理機能をトレーニングする必要があります。ハイレベルなエッジ管理戦略では、OT管理者のためにこれらの機能を解放する必要があります。

1. 生産性向上と効率化

OT管理者は、工場内のすべてのエッジデバイスを自動的に発見し、識別する必要があります。ここでは、ゼロタッチの集中管理型エッジデバイス導入が鍵となります。すべてのエッジデバイスが登録されると、機器管理者は、ソフトウェアメンテナンスのためにデバイス群全体をリモートで管理できるようになります(現場に人を派遣する必要はありません)。さらに、さまざまなOTユースケースをターゲットにしたアプリを、シンプルかつスケーラブルな方法でエッジデバイスにリモートで配備することができます。

2. 管理性と柔軟性の向上

OT管理者は、単一のエッジ管理ソリューションで、シンプルなユースケースから複雑なユースケースまで対応できるようにする必要があります。エンド･ツー･エンドのエッジ管理を行なうために、独自のハードウェア、アプリ、クラウドプロバイダを選択できるようにする必要があります。もちろん、エッジデバイスとアプリを管理するための単一ペインの可視化も含まれます。

3. 優れたセキュリティ体制

セキュリティは後付けではなく、ソリューション全体に広く行き渡るようにする必要があります。拡張性を確保するため、エッジは業界標準のセキュリティポリシー、ハードウェアレベルの鍵、アプリレベルのファイアウォールを用いてサイバー攻撃から保護される必要があります。エッジデバイスは、ゼロトラストのセキュリティパラダイムで保護され、統合された可視性、監査、コンプライアンスを提供する必要があります。
 

エッジ管理ソリューションの柱

OT管理者を適切なレベルで支援するために、IXリーダは上記の機能を提供できる包括的なエッジ管理ソリューションを探す必要があります。私たちは、これらを強固なエッジ管理ソリューションの重要な柱として考えています。

1. エッジデバイス管理

まず、堅牢なエッジ管理ソリューションは、エッジデバイスをワンタッチでプロビジョニングできるようにする必要があります。プロビジョニングは多層的で手間のかかるプロセスですが、シームレスな認証と事前認証されたハードウェアを提供することで、その複雑さをすべて簡素化する必要があります。プロビジョニングが完了したら、エッジコンピュータは管理プレーンに簡単に接続できるようにする必要があります。各デバイスは、あらかじめ定義されたパーソナリティテンプレートで設定可能で、複数のデバイスで共有できるものでなければなりません。最後に、デバイスのプロビジョニングと構成が完了したら、デバイスごとの遠隔測定データを表示し、メモリとストレージの使用率を追跡することが重要です。CPUやストレージの使用状況を把握し、運用を最適化することが重要です。

2. フリート管理

エッジデバイスをエッジ管理ソリューションで個別に管理できるようになったら、次はデバイスのフリートを柔軟かつセキュアに管理できるようにする必要があります。OTスタッフは、一貫性とセキュリティを確保するために、類似のマシンに対してパーソナリティを設定し、ローカルアクセスや構成変更を一切行なわずにセキュリティを確保し、デバイスごとにアプリインスタンスを制御できるようにする必要があります。最終的に、エッジインテリジェンスはエッジデバイスのアプリを通じて提供されるため、アプリ管理はエッジ管理の大きな部分を占めます。エッジ管理ソリューションは、アプリのスケジュールを自由に展開する機能を提供する必要があります。例えば、どのアプリをフリートへ展開できるかのルール設定、不変アプリごとのバージョンの追跡、アプリバージョン間のシームレスなカットオーバのオーケストレーション、ノードごとの展開時間の選択、ネットワーク接続が断続的に失われた場合の生産性の回復などが挙げられます。

3. プライベート/パブリックなアプリマーケットプレイス

アプリマーケットプレイスは、エッジでビジネスロジックを実行するための鍵であり、産業運用の戦略的差別化要因になり得ます。さらに深く掘り下げると、OT管理者は、パブリックまたはプライベートなアプリを公開し(自社または組織内のパートナアプリを持参)、エッジコンピュータ内のコンテナ化/仮想マシン/クラスタ認識環境でそれらを展開できるようにする必要があります。パブリックなエッジアプリはエッジ管理ソリューションのベンダーが管理しますが、プライベートなエッジアプリは、社内のアプリをベースにコンテナや仮想マシンで作成し、展開することができます。OT管理者は、これらのアプリの可視性を組織内の許可されたユーザに制御し、必要に応じて他のユーザと共有できるようにする必要があります。

4. セキュリティ

エッジはIXの取り組みの影響を拡大する一方で、サイバー攻撃の機会も生み出します。産業プラントにおける脆弱な攻撃対象から生まれたサプライチェーンの危機がいくつも発生しています。その答えは、エッジデバイスをシリコンレベルで保護するゼロトラスト･セキュリティ･モデルの実装を実現することです。デバイスは暗号化されたハードウェアのルート･オブ･トラストを使用してオンボード化され、中央からしか設定できないようにする必要があります。ローカルな設定は、改ざんを防ぐために無効にする必要があります。エッジデバイスは、セキュリティプロファイル、ロール/ポリシーベースのアクセス制御、分散ファイアウォールをアプリレベルで備え、ネットワークトラフィックをセグメント化する必要があります。最低限、転送中または保存中のデータはすべてエンド･ツー･エンドで暗号化する必要があります。セキュリティ機能は、可視性、監査、コンプライアンスを統合した完全なものでなければなりません。

5. オープンスタンダード

オープンスタンダードに準拠することで、最新の業界標準の上に構築する可能性が広がり、ソリューションアーキテクチャを再構築しなければならない事態を減らすことができます。クローズドでプロプライエタリなシステムでは、ユーザ(そして企業)は、単一のプロバイダが最適と判断したものに縛られることになります。一般に、オープンな業界標準は製品の品質を向上させ、技術革新の機会を増やすのに役立ちます。これらのオープンスタンダードにより、企業は多様なインフラの中で相互運用性の問題を回避し、継続的な成長、革新、顧客受容を推進することができます。堅牢なエッジ管理ソリューションは、あらゆる種類のデバイス、あらゆるCPUアーキテクチャ、あらゆるOSの管理を可能にするオープンスタンダードを具現化する必要があります。
 

ビジネスの成果

上記のような堅牢なエッジ管理ソリューションを活用する産業組織には、多大なメリットがあります。まず、IXの取り組みでは、拠点間のエッジデバイスを管理するために人員を現地に派遣する際の管理およびスケジュールの遅延を減らすことで、全体として価値創造までの時間が短縮されます。第二に、OT管理者は、エッジデバイスを管理する際に、生産性、再現性、手作業によるエラーの排除が向上します。第三に、低コストで上限があり予測可能なコスト構造を持つ集中型エッジ管理ソリューションにより、組織レベルでの総所有コストと実装コストが削減されます。第四に、IXのリーダは、セキュアでオープンなアーキテクチャの上に、最善のソリューションを構築することができます。最後に、IXリーダは、既存のリソースを使って、ライン、工場、施設にまたがる革新的なユースケースでエッジIXの取り組みを拡大することができます。

実績ある産業界のリーダとの連携

エッジコンピューティングのユースケースを検討する際には、産業用エッジ管理に関する信頼できるOTの経験を持つ、実績ある産業界のリーダと提携することが成功への近道となります。ロックウェル･オートメーションは、1903年の創業以来、産業界のイノベーションの最前線に立ち、ここ数十年間はディスクリート製造企業やプロセス製造企業向けのiXの形成に注力してきました。大規模な製造企業である当社は、40万SKUを生産する世界20の施設においてDXの導入に成功し、市場投入までの時間を短縮し、リードタイムを半分に短縮し、年間生産性を4～5%向上させました。エンド･ツー･エンドのビジネス戦略とテクノロジ･コンサルティング･サービスに対する私たちの包括的なアプローチは、重要な結果を出すために不可欠なものです。私たちの統合的なコンサルティングアプローチは、お客様の最優先のビジネス目標を実現するだけでなく、将来のユースケースに対応したDXインパクトの拡大も支援します。