近年、人工知能(AI)と機械学習(ML)が台頭し、製造業を含む世界中の産業に変革をもたらしています。予知保全やサプライチェーンの最適化から需要予測に至るまで、今日、より多くの製造業者が、よりスマートで、より安全で、よりコスト効率の高い方法で日々の業務をサポートするために、AI、特に生成AI (Gen AI)に頼ったり、模索したりしています。
アジア太平洋(APAC)地域の諸国であるオーストラリア、中国、インド、日本、韓国、ニュージーランドを含む主要製造国17カ国の製造業1,500社以上を対象に実施した当社の「スマートマニュファクチャリング報告書」の最新版によると、世界の製造業の83%が2024年に自社の業務でAI (人工知能)を使用すると見込んでいます。一方、95%はすでにスマートマニュファクチャリング技術を使用しているか、その使用を評価しており、2023年の84%から増加しています。
製造業におけるAIのこのような上昇傾向は、APACでは明らかです。44%の組織がすでにAIやML技術を職場に導入しており、2027年までにAIは主に品質管理に影響を与える役割を果たし、次いでロボット工学、プロセスの最適化が続くと推定されています。この記事では、「スマートマニュファクチャリング報告書」から抽出したデータに基づくいくつかの重要な洞察をご紹介します。
AIでアジア太平洋地域の課題に対処
APACでは、インフレが製造業にとって主要な障害となっています。利益率を低下させるエネルギー価格の上昇と相まって、業界におけるスキル不足は、ビジネス上の課題を解決するためにテクノロジとAIに目を向けるよう、より多くの組織を後押ししています。
現在、クラウドやSaaS (Software-as-a-Service: サービスとしてのソフトウェア)プラットフォームと並んで、GenAIは製造業にとって最も高い投資利益率(ROI)を実現しています。この成功は、近い将来、労働力不足の解決策としてAIやMLを導入し、スキルギャップを埋めることができるとして業界内のリーダたちが自信を高めています。
多くの点で、APACは人間とテクノロジのパートナシップの再構築を主導しており、そこではテクノロジはより生産的でサステナブル(持続可能)なビジネス成果のための代替物ではなく、イネーブラとして捉えられています。組織がAI技術を活用して労働力を強化することで、新たな役割の創出が可能になります。長期的には、これが質の高いアウトプットを生み出す強固でアジャイル(俊敏)な労働環境を生み出すことになります。
さらに、過去の販売データと市場動向を分析することで需要予測を行なうGenAIの能力は、製造メーカが長期にわたって一貫して価格戦略を最適化することで、インフレの影響を抑制するのに役立ちます。
AIとMLで高い品質管理を維持する
製造業では、安全上の理由から、また長期的なビジネスの成長とレジリエンス(回復力)を確保するために、品質が最も重要です。報告書によると、2024年には、品質の管理と向上がAIとMLの最も高いユースケースの1つにランクされています。AIは、欠陥の検出と製品品質の確保に対して、より効率的で正確かつ先を見越したなアプローチを可能にするため、これは驚くべきことではありません。
例えば、サプライチェーン全体の製品の欠陥を特定することは、以前は人間が一度に1つの製品を検査して行なっていました。今日、MLモデルは、視覚データを分析して異常を特定するように訓練することができ、時間が経つにつれて、人間の目では見つけられないかもしれない欠陥を特定することができるようになりました。これにより、コンプライアンスとサービス・レベル・アグリーメント(SLA: サービス品質保証)が改善されます。
データを活用してリスクを軽減
製造業におけるテクノロジとデータの恩恵は非常に大きいが、「スマートマニュファクチャリング報告書」によると、データがサポートすることができた最も重要な分野の1つは、リスク管理の分野、特にサイバーセキュリティの分野です。財務、業務、外部データソースに至るまで、データにアクセスし、それらを論理的に理解できるようにすることは、企業がさまざまな分野にわたる潜在的なリスクを評価するのに役立ちます。
MLアルゴリズムは、サプライチェーンの混乱や市場の変動、さらにはサイバーセキュリティの脅威といった新たなリスクのパターンも検出できるため、製造メーカは手遅れになる前に事前対策を講じることができます。
実際、APACの企業の35%がサイバーセキュリティを障害として挙げています。サイバーセキュリティは、2024年に製造業が直面する外部リスクの上位5つのうちの1つに世界的に挙げられています。そのため、ロックウェル・オートメーションでは、サイバーセキュリティの第一人者と提携し、お客様のネットワークをセキュアに保っています。
より環境に優しい未来のためのESGの実現
「スマートマニュファクチャリング報告書」では、エネルギー管理は製造業において最も重要な要素であると述べています。事業コストに直接影響を与えるが、それ以上に重要なのは、効率的なエネルギー管理によって資源の節約が可能になることです。製造業の大部分は再生不可能な資源を使用して操業しており、資源を節約できることはサステナブルな未来にとって極めて重要です。
現在、APACの製造企業の91%が環境・社会・ガバナンス(ESG)方針を採用しており、中でもエネルギー管理が優先課題となっています。一方、同地域の製造メーカの36%は、サステナブルな取り組みを追跡・定量化する技術の導入をすでに検討しています。
以前はサプライチェーンのレジリエンスが製造企業の重要な関心事でしたが、エネルギーコスト、物価、人件費の上昇に伴い、企業は製造自動化と生産の最適化にもっと注意を払う必要があります。ロックウェル・オートメーションでは、デジタルトランスフォーメーションの実現により、製造メーカがサステナブルな生産システムを構築できるよう支援しています。
スマートマニュファクチャリングを通じて、企業はよりエネルギー効率の高い技術に積極的に投資することができ、ESG目標を成功裏に達成して、オペレーションのレジリエンスを確保することができます。
詳細は、「スマートマニュファクチャリング報告書」をご覧ください。
公開 2024/08/08